フレッドから新生シャソルネイ オレリアン・ヴェルデへ!
色合いは透明感のある紫がかった淡いガーネット色。ダークチェリー、バラ、メントール、タバコの葉の香り。ワインは滑らかかつ芳醇で、熟した赤い果実の凝縮したコクに奥行きがあり、塩気のある滋味深いミネラル、キメの細かいタンニンの収斂味が上品な骨格を形成する! 収穫日は2022年9月2日。収量は50hL/haと豊作だった!レ・リュレとロンスレは標高も畑の方角も土壌の性質も全く同じ!この年のレ・リュレはル・ロンスレよりもアルコール度数は低いが、中身の凝縮した長熟を予感させるワインに仕上がっている!畑面積は0.27 ha。赤は現在のオレリアン・ヴェルデのスタイルを踏襲し、熟成にブルゴーニュ樽を使用!SO2は必要に応じて少量添加。ノンフィルター! 産地:フランス/ブルゴーニュ 品種:ピノ・ノワール 容量:750mlドメーヌ・ド・シャソルネイ Domaine de Chassorney フレッドから新生シャソルネイ オレリアン・ヴェルデへ! 1996 年からブルゴーニュという世界屈指の銘醸地に小さな醸造所を立ち上げ、一代で 11ha の畑を管理するドメーヌにまで成長を遂げたフレデリック・コサールだが、常にドメーヌ・ド・シャソルネイの後継問題について考えていた。 彼には一人息子がいて、当初は跡を継いでくれることを期待した。だが、実際に息子がこの職業を望んでいるかが不確かな上、 継承を考える年齢としてはあまりにも若すぎるということがあり、また、自身の年を重ねるごとに感じる体力の衰えはどうしても避けられず、残された時間の中で継承者を探し育てる必要があった。そこに白羽の矢が立ったのがオート・コート・ド・ニュイにドメーヌを構えるオレリアン・ヴェルデだった。 オレリアンとはオートバイを通じた旧知の仲であり、フレッドにとって、テロワールをリスペクトができ、昔からビオにこだわりひたむきに畑に向き合う努力家のオレリアンはまさに打ってつけの継承者候補だった。また、オレリアンも、友人であると同時にフレッドのワインのファンであり、以前からコート・ド・ボーヌ地区のテロワール、特に 1Cru や白の畑には関心を持っていた。こうしてお互いの利益が一致し、ドメーヌ・ド・シャソルネイの継承がトントン拍子に進んだ。 2019 年 11 月に正式にオレリアンとパートナーシップを組み、それに向けてオレリアンはシャソルネイ専属チームを立ち上げた。2020 年、2021 年のシャソルネイの畑を担当し、シャソルネイ流の栽培方法をフレッドから学んだ。醸造はフレッドがサン・ロマンで 2021 年まで行った。そして、2022 年以降のドメーヌ・ド・シャソルネイの権利関係はオレリアンに完全譲渡することが決まり、フレッドは完全にシャソルネイを退いた。 フレッド自身も、完全譲渡をもう少しゆっくりと行うことも考えていたのだが、やはり彼自身の体力的な問題と、もう一つはシャソルネイとネゴシアンワインを共に管理できる優秀な人材の確保が難しかったことが、早期にシャソルネイを引き渡す大きな要因ともなったようだ。「ひたむきに仕事に向き合う優秀な人材を見つけるのが難しい中、オレリアンは常に向上心と仕事に対する情熱があり責任感も強い。 長期的に見たときに、高品質なシャソルネイを残したいという思いを強く持つならば、彼に醸造まで全て引き渡した方が良い、という結論に至った」とフレッドは語った。 オレリアン自身も、フレッドとパートナーシップを組んだ時点からすでにシャソルネイの継承者として独り立ちすることを意識し、この数年間はしっかり醸造の準備をしていたとのこと。彼は言う「私はシャソルネイを継承するが、完全にフレッドを模倣したワインをつくろうとは思わない。私にとってワインは一貫性が大事であり、アペラシオンやミレジム、テロワールなどブルゴーニュの良き伝統を押さえつつ、フレッドのような革新的なアイデアも少しずつ取り入れていく構えだ」と。 オレリアンがワインづくりにおいて最も重視することは 2 点。1 つはブドウ栽培、そしてもう1つはカーヴでの衛生管理だ。「ワインの品質はブドウにあり」をモットーに、年のほとんどを畑で過ごすオレリアン。父親のアレンが 1971 年に畑のビオ認証を取ったいわばブルゴーニュにおけるビオのパイオニアだったこともあり、彼にとって敬愛する父親の影響は大きい。 トラクターの作業以上に畑仕事は手作業が多く、毎日ブドウの状態を実際の目で確認しながら丁寧な仕事を心掛ける。また、一部ビオディナミを取り入れるなど畑の環境作りには手を惜しまない。 次に、カーヴでの作業は、まず何よりも掃除を徹底している。彼はカーヴ内の不衛生によりワインが台無しになることを最も嫌う。実際、収穫中でもあのキレイ好きのフレッドが感服するくらい隅々までカーヴ内の掃除が徹底されている。「ナチュラルにワインを仕込む以上、我々が醸造で一番努力できることはカーヴ内を清潔に保つことくらいだ」と彼は言う。 近年、温暖化による弊害としてカーヴ内のバクテリアの繁殖が問題となっており、ますます自然酵母での発酵、亜硫酸無添加のワインの醸造が難しくなってきている。多くのブルゴーニュの生産者のように初めから勢いのある培養酵母を使ったり、亜硫酸をその都度ワインに添加することで問題はある程度解決できるのだが、彼はフレッド同様その妥協に対しストイックに抗う。 「そうは言っても、私は亜硫酸添加については否定的ではない。亜硫酸量を限りなく減らすためにカーヴの衛生をストイックなまでに突き詰めるが、決して亜硫酸ゼロには縛られていない。ワインの品質のために必要な時は少量添加する」。重要なことは、消費者にブドウの品質が直に感じられる美味しく健全なワインを届けることで、亜硫酸ゼロのドグマではない。そのために誰よりも畑に向き合い健全なブドウを育て、醸造はワインがバクテリアに汚染されないよう衛生面を徹底する努力を惜しまないと彼のナチュラルワインに対するスタンスを語ってくれた。 実際、オレリアンのシャソルネイ赤を初めて試飲した感想は「どこかホッとする昔懐かしいシャソルネイ」。かつてフレッドが樽で仕込んでいた時代の慣れ親しんだ味わいが感じられる。赤も白もひとつひとつのキュヴェのテロワールが存分に表現されていて、彼の大切にするワインの一貫性や伝統へのこだわりがしっかりと味わいに反映されている。 今年 43 歳になるオレリアン・ヴェルデ(2024 年時点)。フレッドに唯一継承者として認められたタフな男はまだまだ未知の可能性と将来に対する伸びしろを、ひしひしと感じる。これから彼が新生シャソルネイをどう導いていくのか今から楽しみだ。