えっ。あのコクゾウムシがドングリに!? 縄文の食の知恵に学ぶ決定版
岩永哲夫 著 定価2200円(本体2000円+税) 四六判 並製 200p オールカラー はじめに 「炭化ドングリ」「縄文人の食料」。十数年前、ドングリと出会い、付き合いはじめたときのキーワードである。 ドングリの時期になれば、山野でドングリを採集したり、加工して食べたり、小さな畑に実生苗を植えたり、韓国でトトリムッを探したり、ドングリを出土した遺跡を調べたり、ドングリの保存実験をしたり、ドングリを食べるコクゾウムシを飼育したり、人間とドングリの交わりについて考えてきた。私にとっては、なりわいにしてきた考古学研究の一環というより遊びの感覚に近かった。 行き着いた先は「人類はドングリとともに生きドングリに救われてきた」という実感であった。 本書は、十年前に出版した『考古学者のドングリ交遊記』のその後の知見を加えた続編である。 CONTENTS 目次 はじめに 第1章 ドングリ採集記 一 宮崎県内編 1 宮崎市一ツ葉海岸のウバメガシ 2 えびの高原のミズナラ・ブナ・アカガシ 3 延岡市熊野江のウバメガシ 4 西都原古墳群・女狭穂塚のイチイガシ 5 高鍋町舞鶴神社のシイノキとイチイガシ 6 宮崎市佐土原町巨田神社のイチイガシ 7 綾町北俣(綾神社周辺)のイチイガシ 8 綾町明見神社のイチイガシ 9 宮崎市大塚台一号公園のシイノキ 10 宮崎市高岡町八坂神社のイチイガシ 11 都城市山之口町青井岳周辺のハナガカシ 12 西米良村のシリブカガシ 13 小林市霧島岑神社のイチイガシ 14 宮崎市生目台近隣公園里山のシイノキ 二 県外・国外編 1 佐賀県佐賀市のトチノキとコナラ 2 長崎県佐世保市福井洞窟のドングリ 3 北陸のドングリ 4 広島県福山市のアベマキ 5 鹿児島大学植物園のツクバネガシ 6 熊本大学・徳富記念園のドングリ 7 福岡市博物館のドングリ 8 鹿児島県立埋蔵文化財センターのドングリ 9 福岡市大濠公園のアラカシ 10 韓国ソウル南山公園のドングリ 11 沿海州、韓半島東岸のドングリ 第2章 続・ドングリを食べる 一 日本のドングリ食 西都市東米良の「かしの実ギャー」 二 韓国のドングリ食 釜山―国際市場のトトリムッ ソウル―広蔵市場のトトリムッ 済州島ぶらぶら 三 どんぐりもち(トトリムッ)の製造 乾燥保存のドングリからどれくらいのデンプンが採れるか ドングリデンプンの抽出 どんぐりもちをつくる 第3章 ドングリを食べるコクゾウムシ 一 コクゾウムシの飼育 1 コクゾウムシに出会う 2 コメ飼養コクゾウムシの二世誕生! 3 ドングリ飼養コクゾウムシの誕生 4 真夏のコクゾウムシ 5 コクゾウムシの被害 6 ココクゾウムシの発見 7 コクゾウムシとココクゾウムシは同居・同棲できるのか 二 コクゾウムシの由来 第4章 「どんぐり一〇〇〇年の森をつくる会」植樹会(続編) 1 一六号地(都城市山田町)植樹会 2 一七号地(都城市高城町四家)植樹会 3 一九号地(都城市高城町有水)植樹会 4 二一号地(宮崎市高岡町)植樹会 5 二二号地(都城市美川町)植樹会 第5章 ドングリの考古学 一 縄文ドングリの不思議 1 マテバシイはなぜ低湿地型貯蔵穴から出土しないのか 2 低湿地遺跡出土イチイガシの果皮半截はどうしてできたのか 二 遺跡から出土する炭化ドングリの生成を考える―ドングリ炭化実験から― 1 ドングリ炭化実験の契機 2 ドングリの焼成炭化実験 3 ドングリの埋設(埋没)実験 4 まとめ 三 ドングリを貯蔵した低湿地型貯蔵穴の機能を考える―ドングリ保存実験から― 1 低湿地型貯蔵穴の発掘調査略史 2 ドングリ保存実験 ⑴ 河川における埋設保存実験7 ⑵ バケツによる水漬け保存実験 ⑶ 渓流における水漬け保存実験 ⑷ ドングリ保存実験結果 3 ドングリの虫殺し実験 (1) イチイガシの水漬け虫殺し実験 (2) アラカシの水漬け虫殺し実験 (3)虫殺し実験結果 4 低湿地型貯蔵穴の機能 (1) ドングリの虫殺し (2)ドングリの短期生貯蔵 (3)ドングリのアク抜き 5 ドングリの保存 おわりに 附 章 どんぐらー、鮎を釣る 友釣りに出会う 鮎掛けはじめる 西米良に通う 解禁前に心おどる うなぎとスッポン 納竿うなぎパーティ 永遠なれ、山元釣具(おとり)店! 参考・引用文献 あとがき ドングリ春夏秋冬 1.イチイガシの記念樹 2. 黒田のアカガシ 3.仮説「イチイガシと神社」 4. 木城町役場のアラカシ 5. 一月、まだ落下しないアラカシ 6.あくまき作り 7.山つけ 8.「コナラの先端を引きちぎり……」 9.コルクガシ 10.中之又のカシコンニャク 11.どんぐりもちの季節がやって来た 12.「下村家の食卓」 [著者略歴] 岩永哲夫(いわなが てつお) 1947年 宮崎県生まれ 1970年 宮崎大学卒業 1974年 宮崎県の埋蔵文化財保護行政に従事 元 日本考古学協会員 宮崎考古学会会長 宮崎県文化財保護審議会委員 宮崎市文化財審議会委員 都城市文化財保護審議会委員 宮崎ドングリ考古会主宰 現在 九州考古学会会員 日本植生史学会会員 どんぐり1000年の森をつくる会会員 私たちが心をこめて作っています。 鉱脈社は1972年に誕生し、2022年に50周年を迎える、宮崎に根ざした出版社です。 「月刊情報タウンみやざき」や「宮崎を楽しむ大人の情報誌 jupia」などの情報誌のほか、単行本やシリーズ書籍の出版、自費出版のお手伝いを手がけています。 雑誌分野ではスタッフ一丸となって足で情報をかせぎ、書籍出版分野では著者様と力を合わせて納得のいく本づくりを心がけています。 私たちが愛情込めて作った本を、ぜひ手に取ってみてください。