2023年09月15日発売
曲目・内容そのメータが人生初のベートーヴェン交響曲全集のパートナーに選んだのはフィレンツェ五月音楽祭管弦楽団。1985年から32年の長きにわたり首席指揮者を務め、その後もしばしばオペラやコンサートで共演を重ねています。このコンビのベートーヴェン・ツィクルスは当初ベートーヴェンの生誕250年にあたる2020年の秋から翌年初めに予定されていましたが、新型コロナ感染症の拡大で延期となり、2年後に完結したもの。彼らの熱意とこだわりがうかがわれます。ここでの演奏は、歴史的奏法を採り入れたスリムでシャープな演奏とも、ドイツ風の低重心なサウンドによる演奏とも異なり、また40〜50年前のメータのようなダイナミックで豊麗なスタイルとも異なります。テンポは全体的にゆったりとして、一つ一つの音とフレーズをかみしめるようなメータの指揮をオーケストラが渾身の演奏で支えています。それでいてサウンドは明るく軽く、何か吹っ切れたようなものを感じさせます。新しさの追求でもなく、古き良き時代への回顧でもなく、とても独特で個性的なベートーヴェン演奏と言えるでしょう。イタリアのオーケストラによるベートーヴェン交響曲全集はとても少なく、その点でも興味深い企画となっています。ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)DVD Disc1
●交響曲 第1番 - 第3番DVD Disc2
●交響曲 第4番 - 第6番DVD Disc3
●交響曲 第7番 - 第9番意外なことにメータはベートーヴェンの交響曲をあまり録音していない。ベートーヴェンイヤーに企画され、コロナを乗り越え実現した全曲演奏が、この度全集として発売される運びとなった。オケは30年以上も首席指揮者を務め、現在は終身名誉指揮者のポストにあるフィレンツェ五月音楽祭管。全体に悠然とした歩みで、どっしりと構えた安定感のある音楽作りは、長大なキャリアを誇る指揮者の現在の境地を表すものと言えよう。数年前に大病を患ってから座って指揮をするようになり、動きも抑えられているが、映像からは生気みなぎる表情、鋭い眼光が確認できる。 ——江藤光紀アーティスト(演奏・出演)フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団