≪ロウキャップ版≫ ●[AG92点]
百年古樹
復活品種 ◎ワクワクが止まらないプロジェクト! 先日、試飲会で出会った当ワイン。度数12%と決して重くなく、むしろフレッシュなのですが、ジューシーでうまみがじわじわと来て実に美味。 愛らしく多彩で、素敵な個性を持ちつつ千円台中盤…とあって取り扱いを即決。帰って調べれてみれば、調べるほどに面白いワインでした。 ◎ぶどうは「パイス」種。 パイス種をご存知でしょうか?チリではカベルネ・ソーヴィニヨンに次ぐ二番目の栽培規模を誇るというのに、あまり知られていないその葡萄品種を。 元々パイスは、1500年代にスペイン人がチリに持ち込んだとされており、カリフォルニアではミッション、アルゼンチンではクリオージャ・チカなど、国によって様々な呼び名があります。 樹勢が強く、少ない水でも育ち、収量も多い。栽培が容易であることから広まり、チリでは21世紀初頭にカベルネ・ソーヴィニヨンに追い越されるまで、最も多く栽培されていました。 チリ・ワイン界にとってはルーツとも言える品種であり、現在でも世界で栽培されるパイスのうち9割がチリにあるそうです。 ただ、バルクワイン、ボックスワインなどに用いられるように、どちらかといえば「質より量」で、クオリティを期待されてはいませんでした。 ゆえに品質の高い国際品種の普及とともにパイスへの需要は激減。国内には約5万軒のパイス栽培農家があるそうですが、彼らは苦境に喘いでいました。 そんな状況を救うべく、2007年にチリの農林省、タルカ大学、そして『ミゲル・トーレス』の三者共同により、パイス種を用いた「質の高いワイン造り」の研究がスタート。 およそ五年を費やしてパイス種からのハイグレード・ワインが完成。当店でもその成果の一つである『エステーラード・ロゼ』をご紹介させて頂きました。 こうした成功を受け、パイスは再び陽の目を浴び、今度は「品質で」注目を集める葡萄品種となりつつあります。 そんな「高品質パイス」の切り込み隊長の一つが、『ブション』です。 ▼ブション・ファミリー(Vina J.Bouchon) 1887年にチリに渡ったフランス移民のエミリオ・ブションが畑を購入し、1970年代にその孫、フリオがワイナリーを設立。 現在はフリオの子供たちが引き継ぎ、四世代にわたる歴史を持つ『ブション・ファミリー』。 無灌漑×古樹のパイス、カリニャン、サンソーらに光を当て、温故知新的スタイルのワインを発信しているワイナリーです。 極めて高い国際的評価を持ちますが、その原動力となっているのが醸造家のクリスチャン・セプルベダ。 ブション家とともに二人三脚で歩んできた彼は、ティム・アトキンからYoung Winemaker of the Year
に、エル・メルクリオ紙からヤングリーダー100人
の一人に、そしてチリワイン評論家協会によりBest Winamker of the Year
に選ばれた辣腕です。 ワイナリーとしても、2021年度のワイン&スピリッツ誌世界Top100 Winery of the Year
に選出されています(チリからの選出は三社のみ。コンチャイトロ、ウンドラガ、ブション)。 この度のご案内は、『パイス・ヴィエホ』。ヴィエホはオールド・ヴァイン(古い)の意味です。 ◎パイス・ヴィエホ(Pais Viejo) 左の画像は、パイスの収穫風景。「え?これが葡萄樹?」と思われるかもしれません。 全てではないにせよ、その強い樹勢から、人の背よりも高くなり、人の顔よりも大きな房を付けるパイスの収穫は、二人一組となり、脚立を登った摘み取り人が、下で待つ受け取り手の籠に落とす…という光景も珍しくありません。 当ワインのエチケットが、脚立を用いたデザインとなっているのはそのため。 因みにチリのルーツとも言える葡萄だけに、樹齢百年を超えるオールド・ヴァインも少なくありませんで、ブションのパイスもその一つ。 平均樹齢は軽く100年を超えるそうで、(美味しい)「1,500円台の百年オールド・ヴァイン」…とは世界を見回しても稀です。しかも無灌漑。 収穫は全て手摘み。除梗後にコンクリートタンクに入れ、土着酵母のみで14日間自然発酵。 ◎試飲しました。2023.5
ローズレッドの色合いから、野生のレッドベリーと苺キャンディー、花のような華やかな香りと、ブラックペッパーのスパイシーな香り。 一瞬シラーにも似た香りを感じますが、しかし飲むと甘味を押さえたカリ・ピノのような、フレッシュなレッドチェリーの果実味に、軽快ながらも適度な酸味と仄かな甘みが溶け込みます。 アフターに多種のハーブや軽い苦味を残しつつ、余韻は実に爽やか。 風味は素朴なのですが、造りはモダン。ジューシーな舌味に、ささやかな優美を持ち合わせ、あますっぱい色っぽさが楽しめます。果実感はちゃんとありつつ、しっかりドライ。 この価格です。楽しむのは複雑味や高い密度ではなく、ジューシーかつじわじわ来る愛らしい旨味と、パイスの独特で多彩な、他では発見できない味わいの個性。 ヴィノスが1,500円台のチリとは思えぬ高評価を付与しているのはそのあたりに対してなのでしょう。 皆様の「ワインの懐」の、まだ開発されていないニッチな部分を美味しく掘り下げる、実にリーズナブルな体験チケットのような一本です。●なお、当ワインには蝋封版とスクリュー版がありますが、当店在庫はすべて蝋封版です。この価格でロウキャップは珍しいので、お持たせや、またロウキャップ開けの練習にもぴったり♪
■72本完売! 36本追加いたしました。
■ヴィノス92ポイント
■ティム・アトキン91ポイント