≪アンドレチェリチェフが愛した山頂から≫ ●[TP99点/JD99-97点/RP98点/DC98点/AG97点/WE97点]
革命家の
カベルネ ◎十年に一度の逸材。 上質でお値打ちなカベルネの宝庫として知られるパソ・ロブレスですが、90年代の『ジャスティン』、2000年代の『ラヴァンチュール』と、およそ十年に一度、世界の愛好家の度肝を抜く、あっと驚く「高級プレミアムの」カベルネ使いが現れます。 2010年代の主役といえば、ここでしょう…『ダオ・ヴィンヤーズ』。 アドヴォケイト、ダナックともに暫定100点
到達、ヴィノス最高98点
。英デキャンター誌も絶賛。 リザーヴ・シャルドネはWE誌により世界のトップシャルドネ9選
に選出。米国富裕層向け雑誌の「Robb Report」では、世界のベスト・ワイン16選
の一つに、ダオが選ばれました。 この間、わずか12年。まさに規格外のパソ・ワイナリーです。 ◎死の淵からの生還を経て… オーナーは元ITベンチャーの社長…と聞けば、「お金持ちの道楽?」と思われるかもしれませんが、実際はそのような生易しいものでは有りません。 オーナーのダオ兄弟はレバノン生まれ。祖父はオリーブ畑を持ち、父は家具会社にて成功を収め、恵まれた生活を送っていましたが、内戦が彼らの人生を変えてしまいます。 1973年、12歳の兄ジョルジュと、8歳の弟ダニエルが家の前の歩道で遊んでいると、母親が朝食のために二人を家に呼び寄せました。 二人が家に向かったその直後でした、さきほどまで遊んでいた歩道に、ミサイルが落ちてきたのは。その日は、レバノン軍とパレスチナ民兵組織の間で激しい戦闘があった日でした。 二人は爆風を浴び、ジョルジュは意識不明となり、48時間昏睡状態に陥って二ヶ月間入院。弟ダニエルにはミサイルの破片が刺さり、現在でも体の一部に麻痺が残っています。 一命をとりとめたものの、両親はここには住めない…と国を出ることを選び、フランスに亡命します。 ◎ワインとの出会い。 移住して暫くたったある日、父が仕事から帰るとそ、その手には『シュヴァル・ブラン』が。 どのようにして手に入れたのかはわかりませんでしたが、父は興奮しつつも、ワインに敬意を払って、大切に運んでいたことを兄弟は今でも覚えているそうです。 15歳になっていた弟のダニエルはそれをひとすすりし、何を思ったかと言えば、「自分もこんな飲み物を造りたい」ということでした。 しかし当時、中東移民がフランスでワインを造ることは非現実的な夢であり、ダニエルはその想いをそっと胸にしまいます。 一方ジョルジュは18歳でアメリカに渡り、カリフォルニア大学サンディエゴ校に入学。工学を学び、手製のコンピューターを作っては弟のために実家に送っていました。 夢中になってそれで遊んでいたダニエルもほどなくして兄を追って米国に渡り、彼もまた同じ大学に通います。 しかし数年後、フランスの父から「お金が底をついてしまったため、フランスに戻って働いてほしい」との連絡が。 兄弟は熟考したうえ、逆に家族にアメリカに来てほしい、自分たちがフランスに戻るよりももっと稼ぐから、と説得。大学にほどちかい小さなコンドミニアムで、ダオ一家は7人で、ぎゅうぎゅう詰めの生活を送り始めます。 エンジニアとなった兄弟は、自宅でダオ・システムという会社を立ち上げ、狭いリビングでシステムを組み、それを病院に販売します。 するとこれが大成功を収め、1997年に上場する際には、会社の価値は700億円に。30代で既に早期リタイアできるほどの収入を手にしました。 ここでようやくダニエルは、その胸の奥にしまい込んでいたものを取り出すのです…そう、ワイン造りという夢を。 ▼ダオ(Daou Vineyards)二人は世界中を飛び回ります。理想的な土地を求めて。その数は500箇所を超えたそうです。 そして世界中のカベルネ産地を巡って分かったことは、「ボルドーのような素晴らしい土壌と、ナパのような素晴らしい気候、それを持ち合わせる、"ここ"以上に素晴らしい場所は、地球上には存在しない」ということでした。 「ここ」とは…?それは、パソ・ロブレス西部、アデレイダ・ディストリクト。 二人はこの地でこそ世界最高のカベルネを造ることができる、と確信。わずか数年でそれを実現させたのです。 遂に2023年には、ワイン・ビジネス・マンスリーによる「全米TOP50ワイナリー」(売上数量TOP50)にもランク・イン。 複数レーベルを擁する大手グループ会社が上位を占める中、ダオ・ブランドのみでここに食い込み、高級プレミアム・ブランドとしては年間伸び率一位を記録しました。 ダオには様々なクラスがありますが、こちらにご案内させて頂く『パトリモニー』は、ダオ家の最上級品。自社畑の中でも、専用の小さなブロックから造られるトップ・キュヴェです。 ◎パトリモニー(Patrimony) 畑の所在はパソのホフマン・マウンテン(ダオの成功以降は「ダオ山」と呼ばれる)、標高670mの高地。 ここはかのレジェンド、アンドレ・チェリチェフが「環境要素の宝石」(jewel of ecological elements)と呼び、愛した場所。 温暖なイメージのあるパソ・ロブレスですが、国道101号線を堺に、西側では海からの冷たい風が吹き込みます。 ダオの畑は、それに加えて山頂近くにあるため日照を最大に確保でき、上質な山カベの特徴を持ちます。 土壌はカリフォルニアには数箇所しかないとされる、粘土石灰土壌。土壌由来のミネラル感と複雑味をワインに与えます。 ナパに似た気候と、右岸を思わせる希少な土壌、山カベの特徴…。稀有な要素の相乗効果により、力強さとエレガンスの両方が備わり、世界最高峰のカベルネを目指すに相応しい要素が満載。 ここからのカベルネ・ソーヴィニヨン100%。新樽比率100%のフレンチ・オークで30ヶ月の樽熟成。今作をもって、ダニエルは「パソ・カベルネの革命家」と呼ばれるようになりました。 ◎Wine Advocate(2022.12)よりRP98点
「The 2019 Patrimony Cabernet Sauvignon was made with free-run juice and matured for 30 months in 100% new French oak. It has a deep ruby color and alluring tones of truffle, brown sugar and coffee to begin, opening with time to very pure cassis, boysenberry, tobacco, garrigue and aniseed. The palate is supple and fresh with surprisingly restrained, mineral-laced fruits and a fan of spicy accents across the long finish. This ultra sleek, elegant Cabernet evolves continually in the glass and has the harmonious structure it needs to go the distance in the cellar.」(Erin Brooks) リッチで濃厚、強大なパワー。赤系ベリーの果実味、クレーム・ド・カシス、杉、葉巻、砕石、鉛筆の芯、スミレなどの香りがグラスから爆発的に立ち上がります。 濃厚なだけでなく、スパイス感、ハーブ、硬い石のニュアンスなどの深味と複雑味があり、フルボディで豊かな果実味。口当たりは非常にしなやか。 調和の取れた酸と、山カベ特有のタンニン、終わりなきフィニッシュ…それら全てが見事な調和の上に成り立っています。 ナパの銘醸を、ボルドーの一級を超えるカベルネを完成させたダオは、現在イタリアはトスカーナ進出のため畑を構築中だとか。かつての一家でのアメリカ移住にせよ、パソという地での高級カベルネの生産にせよ、何から何までもがリスキーなチャレンジの連続です。 しかしジョルジュはこう語ります…「12歳だった私は、死を目の前で見つめていた。それに比べたら、何も怖くないよ。」と。●英デキャンター誌から「米国産のベンチマーク」と呼ばれるカベルネが、ナパでもソノマでもない、パソロブレスから生まれた…というこの事実。ここはパソ・カベ革命の震源地。
■テイスティング・パネル99ポイント
■ジェブ・ダナック97-99ポイント
■パーカー監修アドヴォケイト誌98ポイント
■デキャンター誌98ポイント
■ヴィノス97ポイント
■ワインエンシュージアスト誌97ポイント